クリニックチェーンを展開する、4大スタートアップ

 

米国では医療保険ごとにカバーされる年間で利用できる医療の量や通院できる医療機関に制限があります。それでもフリーアクセスな日本の健康保険よりも、高額な医療保険料と自己負担の医療費を支払う必要があります。そのため、健康保険に加入していない国民が多く、2009年第1四半期の医療保険未加入率は約16.1%で、大きな課題となっていました。2014年にオバマケア(オバマ大統領が掲げた医療制度改革)による保険適用が開始されたことで、保険未加入者に対しペナルティを課したり、保険会社に対し持病を理由に医療費の支払いを拒否することを禁じるようになり、未加入率は2015年第1四半期には11.9%にまで減少しました。それでもなお、国民の1割は未加入であり、またトランプ政権でオバマケアも存続の危機にあるのが現実です。

 

こういった状況により、保険未加入者や低所得で制限の多い保険にしか加入できない国民は、必要なときに病院にかかるのを躊躇ってしまい、重症化してからようやく通院し、結果的に余計に医療費がかかってしまうという状況も少なくありません。こういった問題から、より安価にスムーズにプライマリ・ケアの医療機関を受診できるというニーズが高まり、新たな形態の医療機関を目指すスタートアップが誕生しました。

 

SalesforceやGoogleの代表等が投資する、Forward

Forwardはセンサーやモバイル、AIといった自社開発の最新テクノロジーを活用したクリニックチェーン。健康保険の代わりに、Forwardは定額の会員サービスとして医療を提供しています。会員は一律月額149ドルで無制限に診察を受けることができ、基本的な健康診断、血液/遺伝子検査、健康相談窓口を利用できます。またウェアラブルデバイスによるモニタリングや、アプリによる24時間のAIサポートなども提供しています。

 

45秒で完了する、疾患のスクリーニングを行うボディスキャナー

45秒で完了する、疾患のスクリーニングを行うボディスキャナー

 

Forwardは連続起業家で、会社をGoogleに売却後、同社でエンジニアのマネージャーなども務めたAdrian Aoun(エイドリアン・アウン)氏によって2016年1月に創業されました。現在サンフランシスコの中心地に1店舗を運営しています。

 


投資家陣
も非常に豪華です。
・Aaron Levie (アーロン・レヴィ/ Boxの共同創業者兼CEO)
・Eric Schmidt (エリック・シュミット/ Googleの元CEOで現会長)
・Garrett Camp (ギャレット・キャンプ/ Uber、Expa、StumbleUponの共同創業者)
・Joe Lonsdale (ジョー・ロンズデール/ Prantirの創業者)
・Joshua Kushner (ジョシュア・クシュナー/ Oscarの創業者、連続起業家、Thrive Capitalのファウンダー)
・Marc Benioff (マーク・ベニオフ/ SalesforceのCEO)
・Founders Fund
・Khosla Venture
・First Round Capital
・SV Angel

 

250人もの医師を有する、One Medical Group

One Medical Groupは患者中心のプライマリ・ケアを提供する、クリニックチェーン。2007年の創業以降規模を拡大し、2016年1月の時点でサンフランシスコベイエリア、ロサンゼルス、ボストン、ワシントンDC、シカゴ、ニューヨーク、シアトル、フェニックスなど米国40都市で展開し、約250人のプライマリ・ケアの医師が所属する、巨大なクリニックチェーンに成長しています。2015年の1年間だけで、新たに80,000人の患者が加入しており、更に企業顧客も着実に増やしています。

 

オンラインから簡単に予約できるなどの素晴らしい患者体験を提供しています。ユーザーは年会費として150〜200ドル支払えば、加入している保険の種類にかかわらず、患者中心の医療を受けることができるのが特徴です。

ニューヨークの新店舗のフロント

ニューヨークの新店舗のフロント


投資家陣
も非常に豪華です。
・Benchmark
・DAG Ventures
・GV (GoogleのCVC)
・J.P. Morgan Asset Management
・Maverick Capital
・Oak Investment Partners
・Redmile Group
・Sharon Knight (シャロン・ナイト/Hawthorne Effect, Inc.のCOO)

 

Khoslaが出資する、Iora Health

Iora Healthは導入保険会社や導入事業会社の加入者や従業員に、医師による診察や、健康指導担当者による遠隔支援(メールやメッセージ、ビデオチャットなど)を提供。また、健康目標を達成できるよう、グループでの教育プログラムなども提供しています。

 

ビジネスモデルはB2B2Cで、料金は一定金額を保険会社や事業会社が支払う仕組みです。行った医療分だけ支払う仕組みではなく、定額を支払う仕組みにすることで過剰医療を防いでいます。ユーザーは無料で利用することができます。

 

同社はHarvard Medical School出身の医師によって2011年に創業。2015年11箇所だったネットワーククリニックは、現在はマサチューセッツ州、ワシントン州、アリゾナ州、イリノイ州の28箇所にまで拡大しています。

 

 

前記の2社同様、Ioraも投資家陣が豪華です。
・406 VenturesLiam
・Flare Capital Partners
・F-Prime Capital Partners
・GE Ventures
・Khosla Ventures
・Polaris Partners
・Rice Management Company
・Temasek Holdings
・Tony Hsieh

 

アマゾンやデルのCEOが投資する、Qliance Medical Management

Qlianceは低所得者で、保険料の安い保険加入している患者向けに展開しているクリニックチェーン。年齢に応じて49~89ドルの毎月のサブスクリプションを支払えば、すべての年齢および所得の人々に、あらゆるプライマリケアや予防ケア、慢性疾患ケアを必要なだけ無制限に提供しています。2006年にErika Bliss氏がシアトルで創業し、現在ワシントン州内に6店舗を展開しています。
 

投資家は以下の通りです。特に個人投資家が非常に著名な顔ぶれになっています。
・Cambia Health Solution
・Clear Fir Partners
・Drew Carey
・Jeff Bezos
・Michael Dell(DellのCEO)
・NAV.VC
・Second Avenue Partners

 

民間企業や市場経済によって医療立て直そうとしているアメリカの中でも、スタートアップが次の時代の医療を担うのでしょうか。引き続き今後の動きを見ていきたいと思います。

 

画像
Forward公式ホームページ
One Medical Group 公式Pinterest

Author Profile

吉澤 美弥子
吉澤 美弥子Twitter:@miyakomx
慶應義塾大学看護医療学部卒業。在学中に海外のヘルステック企業やデジタルヘルス企業に関して取り上げる、HealthTechNewsを立ち上げる。外資系証券会社の株式リサーチ部で、TMT市場に関わる調査アシスタントなどを経て、現在はシリコンバレーのベンチャーキャピタル、500 Startupsの日本ファンドに務める。