癌細胞を手術中に可視化する、最新のバイオイメージング技術

 
正常細胞と癌細胞を手術中に肉眼的に見分けることは不可能だ。通常は、事前の画像診断結果や外科医の経験から少し大きめの範囲で腫瘍を切除するが、これに失敗すると癌の再発や転移に繋がる。
Memorial Sloan Kettering Cancer Centerでは、新たに開発された蛍光マーカーとナノテクノロジーを活かしたカメラを併用することで、癌細胞を手術中にも可視化する実験に成功した。
 

最新のバイオイメージング技術

Cornell大学の開発した新しい蛍光標識色素(マーカー)である、“C dots” は癌細胞に取り込まれることで緑色の蛍光を出す物質だ。C dotsは、二酸化珪素で出来た直径8ナノメートル以下の球状の物質で、染色分子を内包している。体内で異物と判定されないようにコーティングがされており、体内に留まることなく一定時間後に尿中に排出される。
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C dotsは、腫瘍細胞表面に接着・取り込まれるように設計されており、取り込まれるとdot中の染色物質が放出される。その結果として、近赤外線を与えるとより鮮やかに光り、癌細胞と識別することを可能にする。
 
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Memorial Sloan Kettering Cancer Centerでは、Quest Medical Imagingの開発した、Artemis Fluorescence Camera Systemを併用することで、今回の癌細胞の可視化実験を成功させた。この臨床試験が進んでいくことで、外科医は腫瘍の切除時に癌細胞の大きさ・範囲を診断できるようになる。
 
例えば、リンパ節に蛍光色素が取り込まれるか否かで転移の有無を判断できるなど、手術室内で可視化されることには大きな意味があるのだ。
バイオイメージングと言われるこの分野の進展に、今後も注目していきたい。
 
via 【Medgadget
via 【Cornell Chronicle
 

Author Profile

松村 一希
松村 一希ライターTwitter:@kazuki24_
慶應義塾大学医学部4年生。NPO法人ジャパンハートにて、クラウドファンディングプロジェクトを成功させ300万円を集めた実績を持つ。ソーシャルグッドを専門に、NPO向けのネットメディアであるテントセンでのライターを務める他、自身の学業である医学とITとの連携に広く興味を持つ。