飛鳥メディカルは、レーザーを中心とした先端医療機器の開発を行っている企業だ。医療現場においてレーザーは一部領域の治療には不可欠なものになっているが、レーザーの外科的な活用はまだ進んでいない。飛鳥メディカルの中村社長に医療用レーザーの現状とその未来についてお話を伺うことが出来た。
医療用レーザーを活用した癌の治療
弊社では、医療用レーザーの開発を通じて、癌のハイパーサーミア(温熱療法)を推し進めています。レーザーを活用することで、より低侵襲な手術を実現することが出来るのです。
医療用レーザーは、現在では形成外科や皮膚科(あざの治療など)や眼科(レーシックなど)ではなくてはならない存在になっている。レーザーの大きな特色として低侵襲な治療を行えることが挙げられており、獣医の間ではレーザーを用いた手術は一般的なものとなっているのだ。
飛鳥メディカルでは、以前より人気だった獣医師用のレーザー機器に加えて、人間用のレーザー機器の販売を今春より開始したそうだ。
現代の癌治療は根治を目指すのではなく「癌と付き合う」の認識が高まっていますがレーザーで癌を100%治そうとするのではなくて、入り口の治療としても考えています。侵襲性が高く負担の大きい手術をいきなりするのではなく、癌をまず縮小させてから次の治療に取り掛かり、患者のQOLを上昇させたいのです。
癌の一般的な治療法として、手術による切除と、放射線や抗癌剤による治療が主にあげられる。抗癌剤や放射線は完治を目指すこともあれば、手術の前段階として選択し腫瘍を縮小させる効果に期待していることも多い。医療用レーザーを活用したハイパーサーミア(温熱療法)も、同様な効果をさらに低侵襲で行えると期待されているのだ。
レーザーによるハイパーサーミアは、正常細胞に比べて癌細胞は熱に弱いという特徴を利用する。レーザーを照射することで発生する熱を用いて、癌細胞だけを攻撃することが出来るのだ。
より侵襲性の低い治療で、患者の喜ぶ顔が見たい
飛鳥メディカルでは、医療用レーザーを食道癌や、乳癌、子宮頸癌などの使用を進めていきたいと考えている。
例えば、乳房や子宮は単なる臓器ではなく、女性としてシンボルのような大切なもの。それらに対する手術の侵襲性を下げたいと思っています。それは、私が家族を乳癌で亡くしたという原体験が元になっています。
レーザーを活用してより侵襲性の低い治療を行うことが出来た時に、患者さんが喜んでいる顔を見ることが、私の幸せなのです。
医療用レーザーは低侵襲なだけではなく、低コストでもあるそうだ。かつては5千万円を超えるレーザー機器もあったが、飛鳥メディカルでは小型で安価な装置の開発に成功した。半導体のレーザーは500万程度で導入可能で、大学病院のみならずクリニックレベルでの導入も目指している。
レーザー治療の描く未来
世界中に医療用のレーザーを開発している会社はたくさんあるが、皮膚科と眼科用が多いのが現状です。癌治療を行うレーザーを開発するためには、承認を得るのに莫大なコストと時間がかかる為、外科用レーザーの開発メーカーは少数です。だからこそ、弊社はこの領域で勝負をしていきたいんです。
飛鳥メディカルの半導体レーザーは承認を得るために3年以上かかったそうだ。今後は、レーザーの種類を増やしていくと同時に、大手の医療機器メーカーからの開発の受託も増やしていくという。
また、内視鏡下での手術など癌のハイパーサーミア治療をより推し進めていくために、2019年の上場を目標としているそうだ。
患者にとって優しい医療を追求していきたい
今の医療行政では新しい治療法ができても、それが医療費の高騰に繋がってしまいます。弊社は、ローコストで安全かつ、効果が高い治療を行っていきたいのです。どこまで患者の目線に立ち、患者にとって優しい医療を提供できるか、挑戦していきたいと考えています。
例えば、ロボットを活用した内視鏡手術や陽子線治療など、低侵襲な癌の治療法の開発は進められている。ただ、先進医療の特徴としては、どれも保険適応外であったり、高コストであることだ。
レーザーの医療活用自体は10年以上前から用いられているが、外科領域での活用という飛鳥メディカルの新しい挑戦に、今後も注目していきたいと思う。
via 【飛鳥メディカル】
Author Profile

- ライターTwitter:@kazuki24_
- 慶應義塾大学医学部4年生。NPO法人ジャパンハートにて、クラウドファンディングプロジェクトを成功させ300万円を集めた実績を持つ。ソーシャルグッドを専門に、NPO向けのネットメディアであるテントセンでのライターを務める他、自身の学業である医学とITとの連携に広く興味を持つ。
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