車椅子患者にとって、床ずれ(褥瘡)は大きな問題だ。車椅子患者は下半身の感覚が消失しているため、同じ姿勢で座り続けてしまうことが原因となる。トロント大学の研究チームが開発した「SENSIMAT」は、車椅子患者の褥瘡を防ぐスマートクッションで、クラウドファンディングサイトIndiegogoを通じて資金調達中だ。
感染や寝たきりの原因となる褥瘡
褥瘡とは、持続的な圧迫によって組織の血流が減少・消失し、虚血・低酸素状態になって、組織の壊死が起こった状態だ。健康な人は、圧力を感じ続けることで無意識に体位を変更するが、車椅子患者は感覚に障害があることが多いために、同じ姿勢で座り続けてしまうことが多い。
その為、車椅子患者は15-30分毎に体勢を変えることで圧力を解放することが必要となるが、往々にしてこの義務を怠ってしまう。
褥瘡は感染や寝たきり、更には死亡の原因となり、慢性化すると難治性の疾患だ。米国とカナダだけでも、車椅子の使用者は200万人存在しており、少なくとも30万人は脊髄損傷患者で胴体より下の感覚がなく、褥瘡の危険度がより高くなっている。
スマートクッション「SENSIMAT」
SENSIMATは、いくつもの圧センサーが埋め込まれたスマートクッションだ。どんな車椅子にも設置可能で、ユーザーが座っている間に圧力の分布状況などのデータが、Bluetooth経由でモバイルアプリに送信される。
設定した時間内に圧力を解放する動作がなされなかった場合、バイブレーションの作動や、黄色や赤色ランプの点灯などを通じて、ユーザーに姿勢を変更するようにリマインドを行う。
SENSIMATはToronto Rehabilitation Instituteなどで臨床実験が行われており、今後も研究は進められる。
SENSIMATは、クラウドファンディングサイトIndiegogoで資金調達中で、89人から1万1千カナダドルを集めている(2014年4月8日現在)。目標額は1万5千カナダドルで残り日数は17日だ。
SENSIMATは、クラウドファンディングのリターンとして299カナダドルで購入することが可能(海外への輸送費は90カナダドル)で、2014年6月に出荷予定だ。
via 【SENSIMAT】
via 【Indiegogo】
via 【Medgadget】
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- ライターTwitter:@kazuki24_
- 慶應義塾大学医学部4年生。NPO法人ジャパンハートにて、クラウドファンディングプロジェクトを成功させ300万円を集めた実績を持つ。ソーシャルグッドを専門に、NPO向けのネットメディアであるテントセンでのライターを務める他、自身の学業である医学とITとの連携に広く興味を持つ。
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