健康ビジネスにおけるコミュニティとは? —イベント「ヘルスケアビジネスの新しい可能性」レポート

 

3月13日、「あしたのコミュニティーラボ」が主催する、健康ビジネスとコミュニティについて語るイベント「ヘルスケアビジネスの新しい可能性」が、東京・西麻布のKREI SALONにて開催された。ヘルスケアビジネスの新しい可能性として、「コミュニティで健康を支えるというアプローチ」について登壇者が語った。

 

登壇者は、秋山美紀氏(慶應義塾大学環境情報学部准教授)、川添高志氏(ケアプロ株式会社代表取締役社長)、竹林一氏(ドコモ・ヘルスケア株式会社代表取締役社長)、今林徹氏(富士通株式会社イノベーションソリューション事業本部)の四名。秋山氏のモデレーションのもと、登壇者によるプレゼンテーションと会場の聴講者を交えたディスカッションが行われた。

 

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今後拡大するヘルスケア産業

 

今後ヘルスケアビジネスは増加する。コミュニティヘルスを提唱する秋山氏はその要因として、医療サービスの提供者と享受者の境目が曖昧になっていることが大きいという。これまでの医療従事者と患者の関係の変化や、医療従事者の職種を超えた連携も起きるようになっている。
また行政においても変化がみられるという。かつては厚生労働省だけが医療を取り扱っていたのに対し、現在では経産省、総務省、国交省、農水省も医療業界に参入しているのだ。

 

 

「ワンコイン検診」ー健康診断を受診しない人にたいするアプローチとしてのビジネス

 

ケアプロはワンコイン検診という、500円で血液診断を受けることができるサービスを展開している。代表の川添氏は慶應義塾大学看護医療学部を卒業後、看護師として東大病院に勤務。その際に、糖尿病患者の悲惨な現状を目にした。本来早期発見できていれば、避けることのできた「足の切断」といった重傷化を目の当たりにし、より多くのひとが健康診断を受けられる社会を目指したと言う。

 

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今後医療費は増大し、日本の医療は崩壊するとも言われている。川添氏は自分たちで健康を意識し、医療財源を大切にする社会が理想だという。難病患者や、事故の患者に必要な医療が提供されるためにも、個人個人が健康を気遣い、医療資源を大切にする必要がある。川添氏は「健康が社会貢献につながる」という考えが浸透する社会を目指している。

 

 

健康に対するモチベーションをかき立てるドコモ・ヘルスケア

 

ドコモ・ヘルスケアはNTTドコモとオムロンによって設立されたヘルスケア関連企業。現在ウェアラブルデバイスやスマート婦人体温計などの機器と、健康管理アプリなどを提供している。同社は病気に対するアプローチ(医療)と、健康に対するアプローチ(ウェルネス)の両方に取り組んでいる。

 

竹林氏は、日々の健康管理には「モチベーション」が必要だという。ドコモ・ヘルスケアでは、これまでの医療機器の販売から、「モチベーションをあげるサービス」としての機器の販売を目指している。サービス提供に際して、日常生活における健康モチベーションを持続させる為に、病院でのモデルをもとにした「B2M2Cモデル」を導入した。病院では医師が適切なコミュニケーションによって患者のモチベーションを向上させているが、この部分を同社は「モバイル」に置き換えたのだ。普段の日常で、アプリやウェアラブルデバイスが健康を持続させるモチベーションになるという仕組みだ。

 

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実際にドコモ・ヘルスケアが提供している、女性向けサービス「からだのキモチ」では様々なモチベーションをあげるような仕組みを取り入れている。開発チームはゲームを専門にしてきた女性エンジニアなどが中心になって開発しているそうだ。

 

 



ひとと動物が安心して暮らせる社会を支える、富士通の「どうぶつクラウド」

 

富士通イノベーションソリューション事業本部は、農業や医療など、これまでICTが導入されていなかった分野にイノベーションを生んでいる。そのなかでも今林氏は現在ひとと動物が安心して暮らせる社会を支える「どうぶつクラウド」を提供している。

 

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どうぶつクラウド」は、病院、ドッグスクール、ペットホテル、トリミングサロン、ペットショップ、動物保護施設などのペット関連サービスのデータをクラウド化することで、ペットの健康管理が最適化されるというサービス。同社は犬専用のウェアラブルデバイス「わんダント」を開発していて、犬のリアルタイムデータもクラウドに共有される。
「わんダント」は言葉をはなせない犬のために、健康面の異常をいちはやく察知できるようになっている。歩数の変化で犬のあしの異常を検出できたり、震えを計測したりすることで、ストレスを可視化することができる。

 

また、富士通の取得した動物の感染症データと人間の感染症データの連携により、人と動物双方の感染症対策に役立てるという試みも行われている。

 

 

どうやって医療ビジネスを展開したのか

 

ケアプロの川添氏は

 

ターゲットに合わせて、店舗や出張イベントの連携先を変えました。メインターゲットである主婦にたいしては、デパートと提携し、買い物のついでに立ち寄ってもらえるようにしました。フリーターに対しては、パチンコ屋と連携しイベントを行いました。フリーターの方は普段健康について意識する機会が少ないですが、看護師さんと話せるからという理由で来てくれたりしました。

と語り、ターゲットの生活に密着してサービス提供の場を設けたという。

 

竹林氏は東京海上日動との提携サービス「見舞金」という制度について語った。

ドコモ・ヘルスケアの女性向けサービス「からだのキモチ」には、病気の可能性があった際に病院へいくと「見舞金」がもらえるという保険サービスがあります。これは東京海上日動とパートナーシップを結んで実現しました。単純に毎日の健康を記録するだけでは意味が無く、何か疾患の可能性がある際に早期発見できることが重要ですから、病院への導線も設定しました。

今林氏はペット産業に関して、

 

事業という観点で考えると、ペット産業の市場規模は小さい気もするが、ペット保険最大手のアニコムとパートナーシップを結べたことが「どうぶつクラウド」事業の実現を可能にしました。

 

とクラウドシステムの普及において、保険会社との提携に助けられたと語った。保険会社にとっても、ペットの健康寿命が長くなることや、クラウド化で予防やデータの把握がしやすくなるメリットは大きい。

 

健康は基本的に、病気になるなどの直接的なきっかけがないと意識されない領域だ。各社は、ユーザーの所属するコミュニティや生活動線に溶け込むサービス設計、あるいは他業種企業とのコラボレーションを通じて、日常生活における健康意識を向上させるようなアプローチを行っていた。

 

 


主催の「あしたのコミュニティーラボ」とは

 

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今回のイベントを主催した「あしたのコミュニティーラボ」は、富士通が運営する、社会の変化から”あした”につながるビジネスや暮らしのヒントを見つけるメディア。社会に広がるイノベーションをさらに促進するプラットフォームを目指している。これまでに「働き方」「ソーシャルファブリケーション」などのテーマが扱われ、過去にはTWDWとの共催で「社会を良くする仕事をつくる」というイベントなども開催した。

Author Profile

吉澤 美弥子
吉澤 美弥子Twitter:@miyakomx
慶應義塾大学看護医療学部卒業。在学中に海外のヘルステック企業やデジタルヘルス企業に関して取り上げる、HealthTechNewsを立ち上げる。外資系証券会社の株式リサーチ部で、TMT市場に関わる調査アシスタントなどを経て、現在はシリコンバレーのベンチャーキャピタル、500 Startupsの日本ファンドに務める。