心臓内部の三次元視認を可能にする極小チップ

 

1.5mmという非常に小さなチップが開発された。このチップは人間の心臓内からその周りの動脈内の三次元構造を視認できるようにしてくれるという。どのような意図で作られ、今後どのような可能性があるのか、そして現状抱えている課題なども含めて紹介していきたい。

 

 

1.5mmの極小チップとは

 

ジョージアテックの科学者チームによって開発された今回のデバイスは、1.5mmほどの幅の中に56個の超音波送信機と48個のレシーバーを搭載している。また省エネ機能も搭載し、必要でない時は回路をシャットダウンでき、電力を温存することが可能だ。なのでこのチップは20mWほどの電力で機能することが可能で、放熱などで体内に影響を与えることもない。

 

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今回のチップは、心臓カテーテルのワイヤーの先に置かれると、循環系の中を通って心臓内の様子を三次元ビューとして提供することが可能である。医師たちが、具体的にどういった場所で問題が起こっているのかなど確認することができるので、今までは大掛かりな手術が必要だったようなケースでも、ピンポイントに施術を施すことが可能になると期待されている。

 

このプロジェクトを率いたF.Levent博士はこう説明する:

もしあなたが医者ならば、動脈内で、もしくは心臓内で何が起こっているのかを実際に見たいと思うはずだ。しかしながら、今までは断面図などしか見ることが出来なかった。なので、例えばある動脈などが完全に詰まってしまっている場合、何が塞いでいるのかを視認できるシステムが必要であった。その内部状況を見回せることが望まれていたのだが、今までは不可能だった。

 

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現在ではデバイスの開発を終え、動物実験を経てから臨床試験を行う予定である。そして最終的にはFDAの認可を取得することがゴールとなっている。

 

 

筆者の考察

 

非常に面白いデバイスである。確かに今までは様々な測定器が存在していたが、多くは外部から血管を測定・観測したり、マッピングするものだった。1.5mm程度の小ささであれほどの機能を搭載し、血管内、心臓内を三次元マッピングできるということは応用性も期待できるものである。

 

しかし一方で、今回のチップは小さいように見えるが、血管の太さから考えるとまだずいぶんと大きい。成人の心臓近辺の動脈では確かに2-3cm程度の太さの大きな動脈が通っているが、静脈は1cm以下であるし、細動脈になってしまうと0.3mm程度、毛細血管に至っては数十マイクロメートル以下になる。もし万が一チップが流れていってしまうとこのチップ自体が血管を塞ぎかねない。こうした危険性をどう回避するかが今後の課題となるのではないだろうか。

 

いずれにしろこうした技術革新によって多くの人々が救われることになることは間違いない。これからも大いに期待したいところである。

 

 

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Author Profile

中込 翔
中込 翔Twitter:@gomessdegomess
ゴメスこと中込翔。慶應理工システムデザイン工学科卒業。脳血管のシミュレーションの研究を行った。現在はインドのシリコンバレー:バンガロールにてソフトウェアエンジニア。ヒューストン大学の博士課程に合格、9月進学予定。ブレイン・マシン・インターフェイスにおける研究を行う予定・
個人ブログも展開中。