戦争によって手足を失った人々の希望:100ドルの義手

 

多くの人はそれほど関心がないかもしれないが、手足を失った人たちにとって義手は大きな希望である。今、スーダンでの戦争・爆撃によって手足を失った人たちに向けて、3Dプリンターで安価に製造された義手が彼らを救おうとしている。ぜひ一度末尾のビデオをご覧になってほしい。

 

 

すべてのはじまり「プロジェクト・ダニエル」

 

アメリカの起業家、そしてNPO:Not Impossibleの創業者であるMick EbelingがDaniel Omarという少年のことを耳にしたことがすべての始まりだった。

 

2012年3月、14歳のダニエル・オマールはスーダンのとある山で家族の牛の面倒を見ていた。突然爆風が彼を襲い、両手と一部の腕までをも失った。彼がこの話をTime誌に話した時、彼は死んだ方がましだったと答えていたという。

 

「手がなければ何もできない」

 

ダニエルはそう記者たちに答えていた。また、手がこのような状態では戦うことも出来ず、将来家族に大きな負担をかけることにもなり、死んでしまえるならそうしてしまいたかった、とまでこぼしていたという。

 

この話を読んだEbelingは動かずにはいられなかった。周りの人たちを巻き込み、安価にそして簡単に義手を作る方法を確立するためにすぐに動き出した。そして2013年11月、IntelとPrecipartから財政補助を受け、ダニエルを助けるためにスーダンへと飛んだ。コンピュータと3Dプリンター、材料、そしてダニエルに義手を提供するという目標を持って。

 

これがプロジェクト・ダニエルの始まりであった。

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100ドルの義手

 

今回作成された義手は当然最先端の義手のようにはいかない。100ドルという安価な値段と6時間という非常に短い時間で構築できるこの義手は非常に初歩的な機能しか果たすことはできない。また義手の大半が3Dプリントされたプラスチックでできていることから、重いものを持ち運ぶことも出来なければ、指を一本一本制御することも不可能である。しかしながら、それでも、少年の生活を変革させるのには十分だった。この義手によって、彼は2年ぶりに自らの手で食事を取ることが出来たのだから。

 

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筆者の所感

 

義手は現在では安いものでも10万円以上、高いものだと余裕で100万円を超えると言われている。そんな中での1万円での義手提供を実現したことは素晴らしいことである。またMickの良いところは自分たちですべての義手の製造を担うのではなく、現地の病院に3DプリンターとPCを置いていき、何回かのワークショップを行うことで現地の人たちが自分たちの手で義手を制作できるようにしたことだ。

 

今後先進国でさらなる技術革新が進めば、材料費や3Dプリンターの価格が下がり、より安価に製造できる可能性もある。また一方でこうした簡単な義手の作り方を学んだ現地の人たちの創意工夫により、義手に新たな制御機構などのアイデアも生まれるかもしれない。双方からの歩み寄りによってさらに多くの人を救う結果となることを強く願う。

 

 

ビデオ

 

 

 

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Author Profile

中込 翔
中込 翔Twitter:@gomessdegomess
ゴメスこと中込翔。慶應理工システムデザイン工学科卒業。脳血管のシミュレーションの研究を行った。現在はインドのシリコンバレー:バンガロールにてソフトウェアエンジニア。ヒューストン大学の博士課程に合格、9月進学予定。ブレイン・マシン・インターフェイスにおける研究を行う予定・
個人ブログも展開中。