DNAの健康状態を調べる、Exogenによる一般人参加型のゲノムプロジェクト



日常生活を過ごしているだけで、自らのDNAは絶えず傷つけられているという事実をご存知だろうか。DNAへのダメージが蓄積することで、癌や神経変性疾患、老化などが引き起こされると考えられているのだ。Exogen Biotechnologyによる、個人が自らの”DNAの健康状態”を知るためのプロジェクトがIndiegogoで公開されている。

繰り返されるDNAの損傷と修復

環境や化学物質、紫外線などの外的要因によってDNAは絶えず傷つけられ、体内の修復酵素の効果で損傷が回復されるというループを繰り返している。これはどの生物の身体においても当たり前に起きている現象であるが、このDNAのダメージが回復されなかった時が大きな問題となる。
 
ヒトの染色体は、母方由来と父方由来の2本存在する。そのために、常染色体劣性という形質を取る遺伝疾患では、例えば母方由来の染色体にエラーがあっても父方由来の染色体が正常であれば、疾患は発症しない。
しかし、外的要因によって起きたDNA損傷が何らかの要因で修復されなかった場合、2本の染色体どちらにもエラーが起きることとなり、ガンなどの疾患が発症することに繋がると考えられている。これをTwo-hit-theoryと呼ぶ。

 

Exogen Biotechnologyは、このDNAの損傷度合いを測定することが出来る新しい機材を開発した。しかし、彼らには測定結果を分析するのに必要な大量のヒトDNAのデータを持ち合わせていなかった。


クラウドファンディングによる、一般人参加型のゲノムプロジェクト

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ヒトゲノムは解明されたとはいえ、どの配列がどういう形質を発現しているのかは依然として解明しきれていない。それはつまり、DNAのダメージ箇所を把握しても、それが具体的にどのような効果を及ぼすのかわからないということだ。
今回、Exogen BiotechnologyがクラウドファンディングサイトのIndiegogoで打ち出したCitizen science projectとは、データの収集のために一般人に血液の提供を求めるものである。
 

Citizen science projectでは、血液と合わせて、年齢やライフスタイル、生活環境と罹患している疾患などの情報も共有してもらうことで、DNA損傷とこれらの要因との相関関係を導くことを目的にしている。Exogen Biotechnologyは、すべての個人が生きている環境やライフスタイルの選択によって、自分のDNAの健康にどう影響を与えているのか知る権利があると考えている。
 
プロジェクトに参加した人々は、自らのDNA損傷の解析結果と、参加者のデータを活用して導かれた損傷と疾患などとの相関を知ることが出来る。また、毎月血液を調べることで、自らが行ったライフスタイルの変更が、DNAにどのような影響を与えたのか観察することも可能だ。今回のプロジェクトはアメリカ人に限っているが、いずれは国際的なプロジェクトとしてローンチしたいと考えている。


加速する、バイオテックのオープン化

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今回のプロジェクトのように、自らの身体に興味を持つ一般人が研究に参加するケースは増えていくように思う。以前紹介した鳥人間社のOpenPCRのような機械はDIYバイオの流れを加速するものであるし、現在は販売停止となっているが、アメリカでは個人DNA検査キットの23AndMeなどのサービスも人気が高い。DNAという究極の個人情報に対してより安価にかつ簡便にアプローチする手段は増加していくのではないだろうか。
 
DNA検査系のサービスは、まだまだサンプル数が少ないために正確な統計データが出ていないという批判もあるが、今回のようなプロジェクトが成功することで、研究に必要なデータ収集を加速させることに繋がると考えられる。

 
via 【Indiegogo
via 【Medcity


Author Profile

松村 一希
松村 一希ライターTwitter:@kazuki24_
慶應義塾大学医学部4年生。NPO法人ジャパンハートにて、クラウドファンディングプロジェクトを成功させ300万円を集めた実績を持つ。ソーシャルグッドを専門に、NPO向けのネットメディアであるテントセンでのライターを務める他、自身の学業である医学とITとの連携に広く興味を持つ。