医師は何十年にもわたって、聴診器を使用して心音を聞くことで心臓の状態を診察してきた。しかしながら、時には微妙な心雑音を熟練した医師でも見逃すことがある。このデジタル聴診器ViScope MDを用いれば、この問題は解決することが出来るかもしれない。
心臓の状態をリアルタイムに反映する、心音
病院にいけば必ずと言っていいほど聴診器を胸にあてられると思うが、心音には循環器の状態に関する多彩な情報が含まれている。
そもそも心音とは心臓の収縮・拡張の際に発する音であり、正常な心音では心室の収縮期の始まりに起こる第1音と、心室拡張期の始まりに起こる第2音とがある。
1音は、房室弁(三尖弁と僧房弁)が閉まる音で、2音は、動脈弁(大動脈と肺動脈)が閉まる音であり、この音に異常を感じることで疾患を鑑別する重大な手がかりとすることが出来る。
アメリカのHD Medicalから発売されたこの革新的なデジタル聴診器、ViScope MDは、オーディオフィルタや心音図を表示するディスプレイ、そして心音の中から雑音を見つけ出す機能が備わっている。
進む聴診器のデジタル化
このViScope MDで注目すべきは雑音を自動で検出し、ディスプレイ上に警告を表示する機能である。従来の聴診器と異なり、視覚的に心音を捉えることが出来るために、今まで聞き逃していた微妙な異音を捉えることができるようになるかもしれない。また、USBポートでPCに接続することで、記録した心音図をPCで管理、診察に使用することが出来る。
聴診器のデジタル化は進んでおり、例えば3Mのリットマン聴診器Model 3200はいわゆるノイズキャンセリング機能を持ち、さらにBluetoothを用いてPCと聴診した音を同期することが出来る。
これらのデジタル聴診器は指導医が研修医に対して教育目的に使用できる他、一般に心音を聞き取りにくい乳幼児などにも幅広く用いられていく可能性がある。
値段は約6万円($600)と、普段使用している聴診器の数倍の値段であるが、医療ミスを減らしていくという観点からは、大いに期待できる商品なのではないだろうか。
via 【Gizmodo】
via 【Medgadget】
via 【3M リットマンModel 3200】
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- ライターTwitter:@kazuki24_
- 慶應義塾大学医学部4年生。NPO法人ジャパンハートにて、クラウドファンディングプロジェクトを成功させ300万円を集めた実績を持つ。ソーシャルグッドを専門に、NPO向けのネットメディアであるテントセンでのライターを務める他、自身の学業である医学とITとの連携に広く興味を持つ。
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