イリノイ大学のエンジニアたちが新たな泳動ミクロ生物を作り出すことに成功した。彼らは将来、このミクロな運び屋たちが薬を運んだり、ガンに直接到達することができるようになることを期待している。
バイオボットとは
今回開発されたバイオボットは、最先端のエンジニアリングとバイオロジーの融合によってもたらされた。複雑怪奇な機構を持つロボットと違い、バイオボットは頭としっぽだけ、という驚くほどシンプルな構造を持っている。
バイオボットのボディは柔軟性のあるポリマーで出来ていて、動力源は心筋細胞から生み出される。心筋細胞が一体となって収縮を起こすと、尾に力が伝わりバイオボット自体を前進させることになる。しかしながらどのようにして細胞がシンクロし収縮を起こすのかについての詳しいメカニズムはまだ分かっていない。
泳動バイオボットは何をもたらすのか
「長期的なビジョンは実にシンプルだ」とSaif博士は豪語する。
最終的にはこうしたバイオボットを薬の運び屋にしたり、最小限の侵襲手術に利用したり、ガンへの攻撃に使いたいと考えているとのことだ。
すでにSaif博士たちのチームは2本以上のしっぽをもった泳動ボットの開発に着手していて、より高度な操作ができるようにしたいと考えている。
説明ビデオ
筆者が考えるに
今回紹介したバイオボットは元々精子などの細胞に着想を得ている。人間の精子などが60μmほどの全長なので、それに比べるとまだまだ大きいが、それでも今までの発明の中では極小の部類に入る。
この研究の最大の面白さは動力源に心筋細胞を用いている点である。多くの方がご存知のように我々の心臓は意思に反し、一定のリズムで動き続けるが、これを可能にしているのが心筋細胞である。今回はその細胞をしっぽの根本の部分につけることで、以下の図に示すように、たとえそれぞれの細胞が各方向に収縮したとしても
最終的にはしっぽの横幅の薄さから、そちらの方向への細胞の力のみがしっぽを曲げるように変形させることになる。従って、鞭毛を振るようにして動力を得ることができるというものである。
(頭やしっぽを形作っているポリマーの縦・横・高さを比べてみると、頭はそれぞれの方向に曲げづらいのはもちろんのこと、しっぽも縦方向・高さ方向に長いので曲げづらい。一方しっぽの横幅は非常に薄いのでこちらに関しては小さな力で曲げられるということである。)
将来こうしたバイオボットたちが私達の生活を改善するであろう可能性を考えると、ますます期待したいものである。
参考URL:
http://www.medicalnewstoday.com/articles/271483.php
http://www.natureworldnews.com/articles/5696/20140118/sperm-biobot-self-propel-through-bodys-viscous-environments-video.htm
http://www.nara-wu.ac.jp/bio/develop/Heart1.pdf
Author Profile

- Twitter:@gomessdegomess
- ゴメスこと中込翔。慶應理工システムデザイン工学科卒業。脳血管のシミュレーションの研究を行った。現在はインドのシリコンバレー:バンガロールにてソフトウェアエンジニア。ヒューストン大学の博士課程に合格、9月進学予定。ブレイン・マシン・インターフェイスにおける研究を行う予定・
。個人ブログも展開中。
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