オックスフォードの研究者たちは目の退行性病変を患った人々の視力を少し回復させることに成功した。その治療法とは、目の網膜における欠陥のある遺伝子を正常な遺伝子と置き換えるという方法だった。
今回治療を受けた人々は、遺伝性の網脈絡膜変性疾患のコロイデレミアと呼ばれる病気を患っている人達で、CHM遺伝子の変性が原因だと考えられている。
徐々に目が見えなくなる病気
コロイデレミアの発症率はおよそ5万人に1人。徐々に目が悪くなり、40代を迎える頃には完全に見えなくなる。
この病気の原因は、光受容器と呼ばれる、目の網膜において視覚情報を脳に送る重要な部位が徐々に退化してしまうことに原因があると考えられており、未だに完全な治療法は存在していない。
臨床試験開始
臨床試験の治療のはじめのフェーズとして、6人の被験者(35歳から63歳)に正常なCHM遺伝子のコピーを持たせたウイルス(無害化されたウイルス 通称:ベクター)を注射した。
ベクターを投与して6ヶ月後、すべての患者で光に対する感度が上がったほか、2名に関しては視界の劇的な向上が見られたことを突き止めた。
この2名の患者の病気は重度に進行していたが、治療を受けたことで視力が劇的に回復し、以前よりも2行から4行も多くの文章を読むことが可能になったとされる。また、治療における副作用もなかったとのことだ。
(BBCより引用)
今後の展望
今回のようなケースで遺伝子治療が行われたのは初めてだ。研究者たちは今回の研究成果を踏まえて遺伝子治療のさらなる可能性について期待を寄せている。
彼らは遺伝子治療が、今回のような病気の治療にはもちろんのこと、多くの人にとっても関心があるであろう「老化による視力の低下」などの治療にも応用できる可能性を秘めていると言及している。
筆者が考えるに
海外ドラマの”True blood”に出演していたデボラ・アン・ウォールさんの恋人も同様の難病を抱えているという。記事を見る限り、少なくとも2012年時点では有効な治療法が見つかっていなかったということだ。そこから約1年、今回の発見は病気を患っている人々にとって何よりものニュースだろう。
今回の立役者は間違いなく「ウイルスベクター」だ。分子生物学の進歩により、ウイルスのもつ病原性を除去し、人間に都合の良い物質(遺伝子など)を運んでもらう「運び屋」にする技術である。ノーベル賞を受賞した山中教授も用いていたことから名前を聞いたことがある人もいるのではないだろうか?
今回は難病だった先天性の病気の治療可能性を示したウイルスベクター。今後ますます期待したい技術である。
参考URL:
http://www.medicalnewstoday.com/articles/271257.php
http://www.excite.co.jp/News/world_ent/20121017/Dramanavi_018314.html
http://www.bbc.co.uk/news/health-25718064
http://www.huffingtonpost.com/2014/01/16/gene-therapy-choroideremia-blind-sight_n_4605040.html
photo credit: A Silly Person via photopin cc
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- ゴメスこと中込翔。慶應理工システムデザイン工学科卒業。脳血管のシミュレーションの研究を行った。現在はインドのシリコンバレー:バンガロールにてソフトウェアエンジニア。ヒューストン大学の博士課程に合格、9月進学予定。ブレイン・マシン・インターフェイスにおける研究を行う予定・
。個人ブログも展開中。
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