ガン患者を支援するオンラインコミュニティ “I HAD CANCER”

 

「ガン」みなさんも一度は耳にしたことがあるこの病気は日本において昭和56年から日本人の死因の第一位です。現在では年間に30万人以上の国民がガンでなくなっていると報告されています。(厚生労働省より)

 

今回紹介するコミュニティはそうしたガンで苦しむ方々、身近でガンに侵された人をサポートする人たちを助けるためのオンラインコミュニティです。

 

“I HAD A CANCER” とは

 

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このコミュニティは、ガンに侵される前から、まさに闘病中の人々、治療に成功した人々を支援するためのガンサポートコミュニティです。メンバーはガンの種類や年齢、性別、場所、診断の年、ユーザーのタイプから検索をかけることが可能で、自分の境遇に似た人を探すことが可能です。ファウンダーたちがこのサポートを重要だと考える背景には、こうしたオンラインでの取り組みによって、今まさに闘病されている方が、そうした方々のサポーター、家族などが自分たち自身の原体験をシェアし、治療法や副作用、長期における影響や様々な知見を共有することが可能だからです。

 

すべての発端は医者の一言だった

「ガンです」この一言からすべては始まった。2008年、Mailet Lopezは乳がんだと診断された。まだ33歳だった。幸運にも彼女は友達や家族から多大な支援を受けることができたが、誰も彼女が戦っているもののすべてを理解することはできていなかった。Mailetは多くの時間をオンラインでの勉強にあてた。しかしながらなかなか彼女の満足するような回答を得ることは難しかった。

 

「セカンドオピニオンを求めるべきか」
「どのような治療法があり、またその副作用はなんなのか」
「どのように家族や同僚に症状を伝えるべきなのか」
「出産への影響はどうなのか」

 

彼女に救いの手を差し伸べてくれたのはとある女性ー偶然にも待合室で一緒になった乳がんの経験者で同年齢の女性だった。彼女はMailetの数多くの質問に丁寧に答えてくれ、非常に価値のある情報と処置の選択肢を提供してくれた。そしてなによりも彼女はMailetの最良の理解者となってくれたのだ。

 

この出会いがMailetに気づきを与えた。生きるか死ぬかの瀬戸際において、運というものに頼るのでは心もとない。Mailetは決断した。同じような境遇にあう次の人を助けたい。人々がガンと向き合う方法を変えたい。彼女は彼女自身の特殊な役職を利用してAnthony Del Monteと共にIHadCancer.comを立ち上げた。

 

2年足らずでI Had Cancerコミュニティは110カ国に及び、何千人ものメンバーをもつに至った。2012年には、Webby Awardsにより、2013年のベストコミュニティウェブサイトに選ばれ、Parade MagazineはI Had Cancerを人の命を救う7つのSNSの一つと位置づけた。

 

インターネットが国を超えて人々を繋ぐことによって生み出す価値

 

ここ数年で様々なSNSが出現するなかで、ガンという当事者またはその関係者にとって切実な問題をメインテーマとして掲げる今回のこのコミュニティの出現はインターネットのもたらす可能性の一つを体現した良い例であると考えています。僕自身慢性的な皮膚炎であるアトピー性皮膚炎に悩まされていますが、医者以外に悩みを打ち明けることがなかなかできません。同じような境遇の人でないと理解してもらえないという心情もあり、また皮膚という表面的に見えやすい部位における異常によって、時には友人の何気ない一言で傷つくこともあります。こうしたことを相談できる同じような境遇にある人との会話は例えオンラインであってもおおいに精神の助けとなるものだと考えています。今後もこうしたインターネットのちからを利用したサポートコミュニティが増え、活性化することを切に願っています。

 

参考URL:
http://www.ihadcancer.com/our-story
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/24.html

Author Profile

中込 翔
中込 翔Twitter:@gomessdegomess
ゴメスこと中込翔。慶應理工システムデザイン工学科卒業。脳血管のシミュレーションの研究を行った。現在はインドのシリコンバレー:バンガロールにてソフトウェアエンジニア。ヒューストン大学の博士課程に合格、9月進学予定。ブレイン・マシン・インターフェイスにおける研究を行う予定・
個人ブログも展開中。