脳出血による血腫の除去に特化した、医療手術用ロボット



脳内の出血により出来た血腫を、安全かつ効率的に除去する技術はまだ存在していません。しかし、Vanderbilt大学のチームが開発した医療用ロボットがこの問題を解決できるかもしれません。

 

脳出血の手術の問題点

脳出血は、脳内の血管が破裂するときに発生し、漏出する血液は血腫を形成し周囲の脳組織を圧迫します。近年、食生活の変化などにより脳出血の割合は増加している一方(一生のうちに脳内出血を起こす人の割合は 1/50 )で、治療は困難で、症例の約40パーセントに致命的で1ヶ月以内に死亡しています。
 

現在は、脳内の血腫は手術により除去されていますが、血腫が脳表面にある場合などを除いて手術による効果はほとんど得られません。血腫が脳表面にない場合は、正常の脳組織を損傷してまで血腫まで到達することが必要になり、手術によるダメージが血腫を除去するメリットを超えることがあります。そのため医師は手術は見送り、薬の投与のみを行うこともしばしばあるのです。
ナッシュビルのVanderbilt大学のチームは、安全で低侵襲な方法で、これらの血腫を除去するためのロボット装置を作成しました。

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脳血腫除去に特化した手術用ロボット

脳血腫除去ロボットは、直径は 1/20 インチ以下の外側のまっすぐなチューブ 1本と内側の曲がったチューブ 1 本の計 2 本で構成されています。CT スキャンの画像に従って血腫の位置を決定し、ロボットは外側のチューブを脳内にある血腫の外表面に達するまで挿入します。
そして内側の曲がったチューブを血腫内部へと伸ばし、チューブがまるで小さな掃除機のように動き出して血腫を吸い出すことができます。ロボットは血腫内部で先端をあちこちと移動させ、チューブを回転、伸縮させることで動きをコントロールすることが出来ます。
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実験室では、ロボットは疑似血腫の 92%を除去することができ、今後は、超音波画像診断と脳組織変形の様子を示すコンピューターモデルを組み合わせ、血腫すべてを安全かつ効率的に除去できるよう、研究を進めていくそうです。
このロボットに関するプロジェクトは、全米科学財団 CAREER プログラムの資金提供機会、大学院研究フェローシップ、及びドイツ学術交流会からの支援を受けています。
 
ゴットハンドを持つ名医しか出来ないと言われていた手術が、このような医療用ロボットの開発によりどの病院でもできるようになる未来も、そう遠くないかもしれません。

Author Profile

松村 一希
松村 一希ライターTwitter:@kazuki24_
慶應義塾大学医学部4年生。NPO法人ジャパンハートにて、クラウドファンディングプロジェクトを成功させ300万円を集めた実績を持つ。ソーシャルグッドを専門に、NPO向けのネットメディアであるテントセンでのライターを務める他、自身の学業である医学とITとの連携に広く興味を持つ。