みなさんはじめまして。HealthTechNewsのライターとしてこれから更新していきます、ゴメスと申します。現在慶應理工4年ですが、来年からアメリカの大学院に行こうと準備中です。理工学部ならではの視点で更新していきたいと思うので、宜しくお願いします。
今回は脊髄損傷などで身体麻痺に苦しんでいる患者を救いうる新たなテクノロジー「エクソスケルトン」を紹介したいと思います。
人類にとって小さな一歩だが、人類にとって偉大な飛躍であった
それは2011年TEDMEDカンファレンスでのことでした。37歳のポール・タッカーがよろめきながらも前足のクラッチを使って一歩、そしてまた一歩、壇上を歩いてみせたことで観客から拍手喝采をもらいました。一見それほどの価値があるように見えない今回の出来事でしたが、これはただ歩行ではありませんでした。ポールは身体麻痺を抱えている患者だったのです。
麻痺患者への一筋の光「エクソスケルトン」
2010年11月、タッカーは不慮の事故で胸から下の感覚を失いました。しかし現在、タッカーとように同じような損傷を受け、麻痺を抱えた患者たちが再び立ち上がれる希望となる技術が出現しました。それが「エクソスケルトン」です。画像を見てもらえると分かるかと思いますが、外骨格が人の動きをサポートして動かしてくれる形になっています。
こうしたデバイスが実際に出現したのは1990年代ですが、初期のプロトタイプはオーバーヘッドの補助器具が必要で、トレッドミルの上を歩くことしか出来ませんでした。しかし今日技術は進歩し、実際に身につけられる形のロボットとして十分なエネルギーを有し、行動を促すまでに至りました。すでに一部地域では商用化もしています。
依然として問題は山積みですが、ひとつの問題としては、現状ではタッカーも使っていたように、エクソスケルトン自体をサポートするための補助的な器具、クラッチ(支え)のようなものと併用する必要があります。今回実際にタッカーが用いていたエクソスケルトンはEksoというもので、4つのモーターが足と臀部用に取り付けられていて、15個のセンサーがジョイントの角度や各種機構の制御を行っています。これらの動きをコントロールするPCは小さなバックパックのように背負える形になっています。またもうひとつの大きな問題として、階段の昇り降りがありますが、ReWalkというエクソスケルトンはEksoと同様のモータとセンサーとコンピュータを持ち、階段の登り降りの課題をクリアしたエクソスケルトンとなっています。
現状ではこうしたエクソスケルトンの制御には自分自身の身体の重心を傾けたり、ボタン等を通して制御するしかないのですが、将来的には脳で考えただけで、つまり自分の手足とまったく同じように制御することが可能になるかもしれません。そうした未来を目指しているのが “The Walk Again Project” です。
“The Walk Again Project” とは
ミゲル・ニコレリス教授をはじめとするデューク大のニューロエンジニアリングセンターでは、ブレイン・マシン・インターフェイスという脳で考えただけでデバイス(ロボット)を動かしたりする技術を研究しています。彼らが目指す所は、こうした脳で直接制御する技術を用いて、エクソスケルトンを制御し、神経麻痺の患者が自分たちの身体をあたかも本当に身体を動かすかのようにできることを目指しています。もしかしたら下の画像のような身体的ハンデを抱えた人が健常者と同じようにスポーツができる、といった未来もそう遠くないのかもしれません。
参考文献:
http://www.nature.com/nature/journal/v503/n7475_supp/full/503S16a.html
http://www.walkagainproject.org
http://www.nicolelislab.net/wp-content/uploads/2012/11/SciAm2012_Nicolelis.pdf
Author Profile

- Twitter:@gomessdegomess
- ゴメスこと中込翔。慶應理工システムデザイン工学科卒業。脳血管のシミュレーションの研究を行った。現在はインドのシリコンバレー:バンガロールにてソフトウェアエンジニア。ヒューストン大学の博士課程に合格、9月進学予定。ブレイン・マシン・インターフェイスにおける研究を行う予定・
。個人ブログも展開中。
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