最先端高度医療を可能にする、ハイブリッド手術室



ハイブリッド手術室というのを、みなさんご存知でしょうか?ハイブリッド手術室とは、高性能な透視装置と手術寝台を設置し、最近急速に増加している各分野の血管内治療に対応するための手術室です。従来の手術室では対応しきれなかった、最新医療を行うことが出来るようになります。

 

ハイブリッド手術室とは

先日、京都大学病院でも導入されたことが報道されたハイブリッド手術室とは、手術台と心・血管X線撮影装置を組み合わせた手術室のことで、手術室と心臓カテーテル室、それぞれ別の場所に設置されていた機器を組み合わせることにより、最新の医療技術に対応することが出来ます。
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X線透視装置は院内のカテーテル室などに設置されるのが一般的です。従来は手術室に移動型の装置を運び込んでX線透視・撮影を行いながら手術を行っていましたが、現有の装置では心・脳血管カテーテル造影X線装置の出力、透視画像等が高度な術式に対応できない状況でした。ハイブリッド手術室ではその場でX線撮影し、直ちに高画質な3D画像を作成・観察しながら、大動脈瘤治療、あるいは血管修復術の手術であるステントグラフトなどの先進的な手術を迅速かつ安全に実施することが可能となります。
 
写真中の「C」の形をしたアームがX線撮影装置であり、患者が横たわる手術寝台を上下に挟むように設置されています。このアームが自在に動き、さまざまな角度から撮影でき、解像度の高い血管画像やCTのように体の断層像も撮れるために、治療中に3次元画像を作り出すことも可能となったのです。

 

現状と今後の展望

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現在、胸部および腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療などの血管領域における手術や、脳神経外科領域や整形外科領域整形外科領域での活用されており、将来的にはTAVR(カテーテル的大動脈弁置換術/大動脈弁をカテーテルで治療する浸襲度の低い術式)など、今までリスクが高すぎて手術を施行することが難しかった病態に対してもアプローチすることが可能になります。
大動脈瘤は大動脈にできたこぶで、破裂すると命に関わります。この治療では、血管内に入れたカテーテルを通して、筒状の金網と合成繊維製の人工血管を組み合わせた「ステントグラフト」を動脈瘤まで運んで留置。人工血管内に血液を流すようにして、大動脈瘤に血液の圧力がかかって破裂することを防ぎます。)
 

SIEMENS社フィリップス社東芝などのX線撮影装置と、MAQUET社の手術台を組み合わせたシステムを用いることが多く、設置費用は約3~8億円と高額で設置するためのスペースの確保など問題もある。しかし、従来の手術時間を短縮し精度をあげるのみならず、新しい手術すら可能にするこの手術室の導入は、ますます加速していくと期待されています。

Author Profile

松村 一希
松村 一希ライターTwitter:@kazuki24_
慶應義塾大学医学部4年生。NPO法人ジャパンハートにて、クラウドファンディングプロジェクトを成功させ300万円を集めた実績を持つ。ソーシャルグッドを専門に、NPO向けのネットメディアであるテントセンでのライターを務める他、自身の学業である医学とITとの連携に広く興味を持つ。