ZocDocサービス概要
ZocDocは2007年のTechcrunch40でローンチした、「診察のオンライン予約」と「医師の口コミ」のwebサービス。ローンチ当初はマンハッタン地域に限定していたが、現在では1500以上の都市で月間で200万ユーザーに利用されている。この規模は米国の人口40%をカバーしていることになり、ネット普及率が76.3%であることを考慮すると一般化していると言える。
ZocDocの資本
2008年のシリーズAから2011年のシリーズCまでに総額9500万ドルを調達している。(負債200万ドル)金額はもちろん、出資元もKhosla Ventures・個人投資家(Marc Benioff等)・Goldman Sachsと著名な顔ぶれだ。
- シリーズA:500万ドル <Khosla Ventures, Marc Benioffなど>
- シリーズB:1500万ドル <Founders Fund, Khosla Ventures, SV Angel>
- シリーズC:7500万ドル <DST Global, Goldman Sachs>
ZocDocと日本の現状比較
ZocDocでは医師を地域別で簡単に検索することができる。医師のデータは口コミ評価(☆のレーティング)とスケジュールが明記されたリストとなっていている。リスト化された医師のスケジュールの中から予約可能な日時を選択でき、予約がオンラインで完結する。従来のソフトウェア会社が提供しているオンライン予約システムをクリニックのHPに導入するというスタイルよりも安価に、圧倒的な流入量が期待出来ます。
①検索機能と口コミ機能
ZocDocが非常に便利な理由の一つに米国独自の検索機能がある。項目として「専門(科)」「地域」「加入する医療保険」などから該当する医師を検索できる。米国は日本のような国民皆保険ではなく、以下の表のように公的医療保険制度は一部の社会的弱者や公務員・退役軍人を対象としたものだけで、民間医療保険の種類も多くマネジドケアという複雑な仕組みが主流になっているのだ。そのため医師や病院ごとに対応している医療保険が異なり自分の加入している保険に対応した医師が検索出来るのは非常に重要な機能と言える。
②予約機能
医師のスケジュールがZocDoc上でオープンにされ、患者自身がオンラインで予約できるというのも米国では非常に重要なサービスだ。米国ではクリニックでも必ず事前に予約する必要があり、日本のように待てばその日のうちに診てもらえるということはない。すぐにオンラインで予約でき、自分の医療保険が使える近所の病院にかかることが出来るというのは画期的なサービスである。(ERなど緊急性の高い怪我や病気は予約なしでかかることが出来ます。)
日本のでは保険や値段の違いを気にせずいつでも行きたい病院に行くことが出来るという点で大きく米国とは異なる。そのため近年日本でもクリニックHPにオンライン予約システムを導入しているケースは増加傾向にあるが、集客のためではなく効率化を目的とした場合が多い。よく使われている予約システムにToho Pharmaceutical社のものなどいくつか有る。
③ZocDocの新サービス
2012年からは問診票の記入もオンラインで可能になり、オンライン予約サービスとともに、長時間待つことなくスムーズに受診することが出来るようになった。患者さんの利便性はもちろん医療機関側の経営という点でも、いかに事務的な手間を省き、診察に集中出来るかという意味で重要な機能だろう。日本国内でも病院ごとにHPで問診表をダウンロード配信しているところはあるが、ダウンロードして印刷し記入するとなると面倒である。
④ZocDocの料金形態
ユーザー(患者)は無料で利用でき、医師・医療機関は月額2万円で登録可能となっている。ZocDocを活用している医者は活用していない医者に比べて月間平均約100名多くの患者を診療しているというデータもあり、登録する医師・医療機関が急増している。
対する日本の有料病院検索サービスや評価サービスはその効果が明らかにされていないことや予約にタイムラグが生じることが多く、病院側としてはそのような不確実なサービスに有料登録するのは躊躇われますので、病院検索サービスなどがあまり普及していない。しかし諸外国よりも自由に病院が選べる日本だからこそ、検索サービスが必要になるだろう。
ZocDocの競合サービス
Doctoraliaは2007年スペイン発のサービスで、21カ国の医師を検索することができます。月間900万ユーザーが利用し、登録医師数は65000人と規模が大きく、複数の国に展開しているという点で注目の企業。
DocMeInは2009年創設のオンライン予約サービスで、他に無制限の電子メール通知や継続的なケアのリマインダ機能を提供しているサービス。DocMeInはこのサービスを利用し医療以外の業界でのオンライン予約サービスとして展開もしている。
Zestyは2013年に創設されたロンドンの会社で、医師・歯科医などの医療機関全般のオンライン予約サービスを提供している。イギリスはブレア政権時の医療制度改革により、国民皆保険制度で医療費の自己負担が0円
として有名だが、NHL以外の医療機関だと有料であったり、待機期間が長かったり(ERやWalk in centerという駆け込み診療所などで対応中)という問題があるのでこのようなオンライン検索予約サービスは浸透しやすいと予想され、Mangrove Capital PartnersやスカイプやWixなどの前投資家が投資している。
HealthLeapは2009年7月に創設した会社であり、2011年2月に医療システムのVitals.comによって買収された。Vitalsは現在のシリーズCまでにMilestone Venture Partnersなどから2900万ドルを調達し、HealthLeapの他に医療系スタートアップを一社買収している。
DocASAPは2012年創設の医師・歯科医のオンライン予約サービスで、シードラウンドで80万ドルを調達している。この手のサービスの中でも特に新しい。
この他に米国内だけでも多数の競合が存在するが、やはりZocDocはユーザー数や対応医療機関といった全ての点で圧倒的なトップとなっています。
まとめ
以上ZocDocについてご紹介しましたが、同様のサービスを日本で展開するには日本の医療制度ならではの検索項目などが必要となるだろう。文化的に日本は医師を選ぶというよりは、病院のネーミングなどで選ばれることが多く、風邪で大学病院にかかるような場合も近年減っているとはいえ未だにあるのが現状だ。病院検索プラットフォームやオンライン予約システムが整備されることにより、このような偏りを失くすことができれば、医療資源の効率化にも繋がるだろう。
Author Profile

- Twitter:@miyakomx
- 慶應義塾大学看護医療学部卒業。在学中に海外のヘルステック企業やデジタルヘルス企業に関して取り上げる、HealthTechNewsを立ち上げる。その後米系ベンチャーキャピタル500 Startupsの日本ファンドを経て、現在はCoral Capitalで投資担当を務める。
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